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東京地方裁判所 昭和30年(ワ)5159号 判決 1962年12月24日

判   決

本訴原告(反訴被告)

藤巻利三

右訴訟代理人弁護士

脇田久勝

吉田正一

御田哲雄

藤江忠二郎

同復代理人弁護士

浜田源治郎

本訴被告(反訴原告)

栗原道直

右訴訟代理人弁護士

馬場重紀

奥村又雄

大石五郎

同復代理人弁護土

飯塚芳夫

右当事者間の本訴昭和三〇年第五、一五九号不動産所有権確認等請求、反訴昭和三一年(ワ)第三、五六七号土地家屋明渡等請求併合事件につき次のとおり判決する。

主文

(本訴)

本訴原告が別紙目録記載(一)ないし(六)の各土地建物につき所有権を有することを確認する。

本訴原告のその余の請求をいずれも棄却する。

(反訴)

反訴被告は反訴原告に対し、別紙目録記載(七)および(八)の各建物を明渡せ。

反訴原告のその余の請求をいずれも棄却する。

(訴訟費用)

訴訟費用は本訴、反訴を通じて、これを二分し、その一を本訴原告(反訴被告)の負担とし、その余を本訴被告(反訴原告)の負担とする。

(仮執行)

この判決は建物明渡を命ずる部分に限り、反訴原告において仮に執行することができる。

ただし、反訴被告において金三十万円の担保を供するときは右仮執行を免れることができる。

事実

第一申立

一  本訴原告(反訴被告)訴訟代理人は次のとおり判決を求めた。

(本訴)

1 別紙目録記載(一)ないし(八)の各土地建物について本訴原告が所有権を有することを確認する。

2 本訴被告は本訴原告に対し、金三百万円の支払を受けるのと引換に前項の各不動産について昭和二八年一二月三一日付売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

3 本訴費用は本訴被告の負担とする。

(反訴)

反訴原告の請求を棄却する。

二  本訴被告(反訴原告)訴訟代理人は次のとおり判決ならびに仮執行の宣言を求めた。

(本訴)

本訴原告の請求を棄却する。

(反訴)

1 反訴被告は反訴原告に対し別紙目録記載(一)ないし(八)の各土地建物を明渡せ。

2 反訴被告は反訴原告に対し昭和二八年九月一日から右明渡済まで一ケ月金一五万円の割合による金員を支払え。

3 反訴費用は反訴被告の負担とする。

4 この判決は仮に執行することができる。

第一本訴原告(反訴被告、以下単に原告と呼ぶ)の主張

原告訴訟代理人は本訴請求原因ならびに反訴請求原因に対する認否および抗弁として次のとおり陳述した。

一  原告は昭和二八年八月五日その所有に係る別紙目録記載(一)ないし(八)の各土地建物(本件各物件と略称する)を本訴被告(反訴原告、以下単に被告と呼ぶ)に代金二百五十万円で売り渡し、その旨の所有権移転登記手続を了えたが、右売買の際、被告との間で、原告は本件各物件を昭和二九年二月四日までに、代金三百万円で買受けることができる旨の再売買一方の予約を併せて締結し、その特約条項として、原告は再売買の予約完結の結果被告に支払わなければならなくなる金三百万円の調達方法として、本件各物件を適当な方法で処分することもでき、被告はこの処分等協力すべき旨を約束した。

(以下これを代金調達方法に関する特約と呼ぶ。)

二  原告は右再売買予約の完結期間内である昭和二八年末頃訴外高野清一を介して被告に対し同予約を完結する旨の意思表示をした。

三  仮に右予約完結に当つて買受代金三百万円を提供しなければならないとしても、本件においては次のような事情があるから、右代金の提供をまたないで有効に完結の意思表示がされたものである。すなわち

原告は買受代金三百万円を調達するため昭和二八年一二月中に訴外葛飾信用金庫その他と交渉し、同金庫から本件各物件を担保に金三百万円を借り受けることの内諾を得たので、その頃直ちに被告にこの旨を伝え右借受金をもつて再売買の代金の支払に充てるため被告の協力を得たい旨を申し入れたにもかかわらず、被告は前述の特約条項の存在を無視し、右申し入れに応じなかつた。しかしながら原告は被告の協力さえあれば被告に支払うべき買受代金三百万円を直ぐにも調達できるだけの確実な融資先を得、これを被告に伝えており、被告は前記のとおり買受代金の調達に関する特約に基き当然原告の申し入れに協力すべき義務を負うものであるのに、これを履行せず原告の右金員の調達を不能ならしめたものであるから、民法一三〇条の法意に鑑みても現実に代金の提供かあつたと同様に有効な再売買予約の完結の意思表示をなし得るものと解すべきだからである。

四  したがつて原告は遅くとも昭和二八年一二月三一日には右再売買の予約を完結し、本件各物件の所有権を再び取得したことになるが、被告はこれを争うので、本訴請求として、原告が本件各物件について所有権を有することの確認ならびに被告は再売買代金三百万円の支払を受けるのと引換に右各物件について昭和二八年一二月三一日付売買を原因とする所有権移転登記手続をすることを求める。

五  (一)昭和二八年八月五日本件各物件を売渡した際、原被告間でそのうち別紙目録記載(一)ないし(六)の各物件を一括して賃料一ケ月一五万円その他被告主張のような内容の賃貸借契約を締結したこと、被告主張の日時に右賃貸借契約を解除することの意思表示があつたことおよび被告主張のとおり本件各物件を占有していることはいずれも認める。

(二) しかしながら、右賃貸借契約は通謀虚偽表示であり無効なものである。

すなわち、本件再売買予約は、譲渡担保の趣旨でなされたもので、原告は売買代金名義で被告から金二百五十万円を借り受け一ケ月六分相当の利息金一五万円を支払うべきところ、これは利息制限法に抵触する高利であるため被告の要求により賃料名義で授受できるように外形を整えたものにすぎない。それだからこそ本件建物の敷地まで原告が賃借したかのような契約となつたものであり、本件各物件の当時の価格が約八百万円であつたことからみても右賃貸借契約は利息制限法を潜脱するため原被告間の通謀によりなされた仮装のものであることは明らかである。

(三) 仮に通謀虚偽表示でないとしても、原告は前述のとおり本件各物件につき遅くも昭和二八年一二月末日には再売買の予約を完結し、再びその所有者となつたものであるから、右賃貸借契約のうち各建物を目的とする部分は混同により、また各土地を目的とする部分は被告の賃貸人としての義務が履行不能に帰したことにより、それぞれ消滅したものである。

第二本訴被告(反訴原告)の主張

被告訴訟代理人は反訴請求の原因ならびに本訴請求原因に対する認否等として次のとおり陳述した。

一  被告は昭和二八年八月一五日、当時原告の所有であつた本件各物件を代金二百五十万円で買受けたが、ただ登記手続上は、中間省略によつたため訴外東京魚類株式会社から移転登記をうけたものである。この売買契約には、原告が昭和二九年二月四日までに代金三百万円を支払つて別紙目録記載(一)ないし(六)土地建物を買戻すことができる旨の買戻権附売買であり、右買戻代金の調達に関して原告主張のような代金調達方法に関する特約が附せられてあつたものである。

二  被告は本件各物件を買受けてその所有者となつたので、同日原告に対しそのうち別紙目録記載(一)ないし(六)の土地建物を一括して賃料一ケ月金一五万円毎月五日限り支払うこと、賃料を二ケ月分以上滞納もしくは無断転貸したときは催告を要しないで解除できること、期間は原告の買戻権の行使期間に限るとの約束で賃貸した。(ただし一時使用の目的を主張するものではない。)

三  被告は右催告不要の特約に基き昭和二九年一〇月一三日到達の書面で原告に対し昭和二八年九月一日以降の賃料の不払を理由に本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。仮にこれが認められないとしても、昭和三一年八月二九日送達の反訴状により本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。

四 原告は昭和二九年一〇月一四日以降正当な権原なく本件各物件を占有し(ただし別紙目録記載(一)および(四)の土地は建物敷地として占有)被告の所有権に基く使用収益を妨げ一ケ月金一五万円の割合による賃料相当の損害を与えている。

五 よつて被告は反訴請求として原告に対し別紙記載(一)ないし(六)の物件については賃貸借契約の終了により、同(七)、(八)の物件については所有権に基き各明渡を求め、なお右(一)ないし(六)の物件について昭和二八年九月一日から賃貸借終了の日である昭和二九年一〇月一三日までの賃料および翌一四日以降右(一)ないし(六)の明渡済に至るまでの賃料相当の損害金として、それぞれ一ケ月金一五万円の割合による金員の支払を求めるものである。

六 原告が昭和二九年二月四日までの間に本件各物件の再売買予約を完結する意思表示をしたことおよび訴外葛飾信用金庫が原告への融資を内諾していたことは否認する。もつともその後、原告から本件各物件を第三者に担保に供し金三百万円の融資を受けたいからとのことで協力を求められたことはあるが、すでに買戻期間(再売買の予約完結の期間とみても同様)を徒過した後の昭和二九年頃のことであり、しかも原告は買戻代金の提供もしないのみならず、その求める協力の内容が不当であつたから、被告はこれを拒んだことはある。その際の原告の要求は、金三百万円のうち金百五十万円だけを買戻代金の一部として被告に支払い、同代金のうち未払額は原被告間の準消費貸借に切り換え、なお右三百万円の融資については被告が債務者となり本件各物件を担保に供することというのであつて、前述の買戻代金の調達方法に関する特約の趣旨を逸脱し、とうてい被告が承諾することのできない内容のものであつたから、被告が協力を拒んだことには何等契約上の信義にもとるところはなく、かえつて原告の申し入れが失当である。

第四証拠<省略>

理由

第一  本訴請求に関する判断

一原告が昭和二八年八月五日(日時の点は成立に争いない甲第三号証による)被告に別紙目録記載(一)ないし(八)の本件各物件を代金二百五十万円で売渡し且つ昭和二九年二月四日までならばそのうち(一)ないし(六)の物件を代金三百万円で買い受けることができる旨の予約を締結したこと(その性質については後述する)、しかも右予約の完結により原告が被告に支払うべき金員の調達方法につき、原告は被告と協議のうえこれら物件を処分する等の方法によることができ、その場合は被告も協力すべき旨を約したいわゆる代金調達方法に関する特約も併せて締結したことは、いずれも当事者間に争いがない事実である。

二被告は本件売買予約は買戻約款を意味するものにほかならないと争うけれども最初の売買代金と後の再売買代金との間に存する差額金五十万円は最初の売買代金二百五十万円に対する利息ならびに売買契約締結の費用に該当するものであることを認むべき的確な証拠はなく、かえつて後記認定のとおり別途に利息に相当する賃料名義の金員の支払を約束している事実に照らせば右の五十万円は再売買代金額三百万円の一部を構成するものにほかならないものと認められる。

のみならず前示の代金調達方法に関する特約及びこれを記載した成立に争いない甲第三号証によると原告が買受の意思表示をするには必ずしも現実に代金の提供を要するものでないことが認められるから、これらの事実に基けば本件売買は再売買一方の予約の形式を採用したもの(後記四に認定どおり実質は譲渡担保)と認めるのが相当であり、これを覆しいわゆる買戻約款付売買と認めるに足るだけの証拠はない。

三  なお原告は別紙目録記載(七)及び(八)の建物もまた右再売買の予約の目的となつていると主張するけれども、同予約の成立を証する甲第二号証(公正証書)及び前顕甲第三号証によれば対象とされる物件は別紙目録(一)ないし(六)の土地建物と表示されており原告の立証その他本件全証拠によつても同(七)、(八)の建物まで予約の目的に含めながら書面の記載に際しこれを遺脱したものと認むべき形跡は存在しないので、両物件に関するかぎり原告の請求は失当である。

四そこで右再売買予約の形式を採用した取引行為が譲渡担保か売渡担保(被担保債権を伴わないもの)になるかについて検討するに、

(一)  (証拠―省略)を総合すると

1 原告はかつて訴外東京魚類株式会社に対し約二百万円、その他の第三者にもほぼ同額の負債があつたこと、そこで昭和二六年三月六日右訴外会社に代物弁済として本件各物件を譲渡する際とくに、これら物件の総額は訴外会社の債権額を遙に超過するものであるから訴外会社は原告の第三者に対する前示債務をも消滅せしめなお原告に対し金百万円程度を交付すべき旨の特約をなしたこと、それにもかかわらず訴外会社はこれらの負担を履行せず剰え別紙目録記載(一)及び(四)を除くその他の物件に抵当権を設定したところ、これら物件について当庁昭和二八年五月二九日の競売開始決定を見るに至つたので、原告は直ちに訴外会社と折衝し、同会社の右抵当権者に対する債務約二百万円を代つて弁済すれば本件各物件は再び原告の手許に戻すことに了解をつけたこと、

2 そこで原告は右取戻の資金を調達するため昭和二八年七月末ないし八月初頃訴外伊東秀将、同矢吹元一を介して被告に本件各物件を担保とし金員を借り受けたい旨を申し入れたところ、被告は単純な売買ならば相談に応ずるが金銭の貸付を伴う売買には応じられないとの態度に出たので、矢吹のとりなしもありやむなく原告の意向に一応従い、表面上は金銭消費貸借契約を締結していないこと、

3 しかしながら原告は当面必要な金二百五十万円を入手できれば足り本件各物件の時価相当額を全額入手するまでの必要はなかつたので、後日の買戻を容易にする含みもあつて、前示のように売買代金は二百五十万円、再売買代金は三百万円と定め、約六ケ月の期間内ならば前示六筆の不動産を取戻し得ることとし、併せて前示再売買代金の調達方法に関する特約を締結したこと、

を認めることができ、右認定を覆すに足る証拠はない。

(二)  ところで本件再売買予約付の売買契約(後述のとおり実質は譲渡担保)の成立に際し、被告主張のような賃貸借契約が締結されたことは当事者間に争いがないところであるが、前顕(証拠―省略)及び弁論の全趣旨を総合すると借主たる原告は別紙目録記載(三)及び(五)の各建物を賃借するほかその敷地までも賃借したものとされていること、また賃貸借期間が建物の使用目的からみて異常に短いこと(借家法に抵触することは勿論である)が認められ、右契約が通常の賃貸借契約とは著しくその性質を異にするものであることが窺われる。右認定に反する証拠はない。

(三)  加うるに前顕甲第三号証の記載から明らかなように原告が予約完結期間内に再売買代金の一部を被告に支払つたときはその割合に応じて前項のいわゆる資料を減額することを当事者間で取り決めている。(これに反する証拠はない)

(四)  以上(一)ないし(三)に認定した事実及び各項挙示の証拠を総合すれば本件契約は一見売渡担保の外形を呈しているけれども、その法的性質は依然として元金三百万円とし内金五十万円を天引きし、なお賃料名義で一ケ月五分に相当する金一五万円の利息の特約(利息制限法に抵触するものである)を付した再売買予約の形式による一種の譲渡担保と認めるのが相当である。

(中略)以上の判断を覆すような証拠もない。

五(一)  そこで先ず代金の提供がない再売買予約完結の意思表示の効力につき考えるに、譲渡担保が再売買予約の形式を採用している場合においてとくに本件のようにいわゆる代金調達方法に関する特約を締結している場合には、完結権の行使そのものには必ずしも代金の提供を要しないものと解するのが相当である。けだし右特約はまさに予約を完結した結果支払義務を生ずる再売買代金の調達について被告の協力義務を定めたものだからである。(それゆえ完結後に買主たる原告が代金の支払を怠れば被告は通常の売買契約に準じて相当の手段を採り得るものである。)

(二) そうであるところ(証拠―省略)によれば原告は遅くとも昭和二八年一二月末頃高野清一を使者として本件再売買の対象となつている各物件を約定代金額で買戻したい旨を申し入れたことが認められるから、これにより本件再売買の予約は完結されたものと認めるのが相当である。

(中略)右の認定を覆すべき証拠もない。

(三) なお右予約完結の申入に対し、被告は、本件建物が競売を免れたのは被告の融資があつたからであり本件土地建物は被告が所有権を取得したのに原告は月一五万円の賃料を一ケ月分しか支払わないこと(中略)を不当とし、金三百万円ではとうてい応じられないとの態度に出たので、高野はとりつくしまもなく代金調達方法について協議もせず引き下つたことは(証拠―省略)から明らかでありこれを覆すに足る証拠はない。

六以上の判断から明らかなとおり原告は別紙目録記載(一)ないし(六)の各物件については適法に予約完結権を行使したものであるから、これによりその所有権を取得したものと解せられるところ、被告がこれを争つていることは明らかであるから、右物件の範囲で原告の所有権確認の請求は理由があるけれども別紙目標記載(七)及び(八)の物件についてはその請求は失当であり棄却を免れない。

さらに原告は再売買代金たる三百万円と引換に所有権移転登記を訴求するけれども、一般に譲渡担保の場合には債務者は被担保債権(元利金及び遅延利息)を消滅させない限り担保物件の返還請求権を取得しないものと解されているから本件不動産の所有権移転登記義務と金三百万円の消費貸借債務(利息の特約を含む)とは同時履行の関係に立たないものと解すべきところ、原告が本件債務を現実に弁済したものでないことはその主張自体から明らかであり、また本件全証拠によつても予約完結から後に前示代金調達方法に関する特約に基き、弁済の提供と同視できるだけの確実な融資者を得てこれを被告に伝え特約に基く協力を求めた事実を認めるに充分でないから被告の協力義務違反の主張も未だこれを採用するに至らず結局原告の移転登記請求はすべて失当である。

第二  反訴請求に関する判断

一すでに第一、一において説示したとおり被告(反訴原告)は原告(反訴被告)から本件各物件を買い受け、そのうち別紙目録記載(一)ないし(六)の各物件については再売買の予約を締結したこと、同四、(二)説示のように右(一)ないし(六)の各物件を目的として賃貸借契約が被告主張のような賃料額等の約束で成立したことはいずれも当事者間に争いがない。

二しかしながら本件賃貸借契約は第一、四、に説示したとおり譲渡担保に伴う利息とすれば極めて高利なものとなるので表面立つて消費貸借の契約を締結することを嫌つた被告が、賃料名義でこれを取り立てる手段として採用されたものであり、利息制限法を潜脱する意図の下になされたもので賃貸借契約としては仮装なものと認めるのが相当であるから、被告の賃料支払及び賃貸借契約終了に基く明渡を求める反訴各請求はいずれも失当である。

三また原告が本件各物件を占有していることは当事者間に争いがないけれども、すでに第一において判断したとおり原告は再売買の予約を適法に完結し別紙目録記録(一)ないし(六)の各物件の所有者となつたものであるからこれに関する不法占拠(もしくは明渡遅延)を原因とする賃料相当の損害金が発生する理由はなく、資金に対する遅延利息を請求するならとも角賃料相当の損害金請求は失当である。

ただ別紙目録記載(七)及び(八)の両物件についてはすでに第一、三、において説示したとおり原告が再取得したものとは認められず、他に原告が適法な占有権原を有することの主張、立証はないから反訴請求のうち右(七)及び(八)の物件の明渡を求める部分は正当として認容すべきものであるが、これに関する賃料相当額が幾何となるかについて的確な立証がないから、これに関する損害金の請求は排斥を免れない。

第三  結論

よつて原告の本訴請求のうち別紙目録記載(一)ないし(六)の各物件に関する所有権確認の請求は認容し、その余の本訴請求はいずれも棄却し、被告の反訴請求のうち別紙目録記載(七)及び(八)の物件に関する所有権に基く明渡請求は認容し、その余の反訴請求はいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条、第八九条、仮執行、同免脱の宣言につき同法第一九六条を各適用し主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第一八部

裁判長裁判官 石 田 哲 一

裁判官 滝 田   薫

裁判官 山 本 和 敏

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